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『負のラカン—精神分析と能記の存在論』 [読書記録・日記]

リクールの『生きた隠喩』が進まないので、気分転換に石田浩之『負のラカン—精神分析と能記の存在論』をごく適当に細切れに読んだ。やっぱり気分転換に読んでも全然わからなかったけれど(当たり前、真面目に読んでもわからないだろう)、七割以上が言語の話だった。というか、たぶん全部言語の話だった。

前半の、現実界(記号に入らない世界「人間にとっての不可能なもの」、想像界(アイコニックな記号の世界)、象徴界(多義的な言語の世界)の辺りが面白かった(三章まで)。
後半の男根(ファルス)の話は、うーん、よくわからない。よく考えるな—という感じ...それを言語で語らないといけないトートロジーのようなものを感じる(適当な感想)。
そのうち、もうすこし消化して、ちゃんと感想を書こう。

ラカン本人の本は初期の薄い『二人であることの病い パラノイアと言語』だけしか読んだことがない。
新宮一成『ラカンの精神分析』がこの『負のラカン』と並んで紹介されるけれど、確かに二つ読むと良いのかもしれない。『ラカンの精神分析』はそれほど言語によらず、また読みやすい。個人的には『ラカンの精神分析』の方がドキドキはする。歴史的なことも書いてあるので、それも背景として面白いし、冒頭の症例が「欲望は他者の欲望」という話としてぞっとする。
先に『ラカンの精神分析』を読んだ方が、『負のラカン』もイメージして読みやすいかもしれない。
(『ラカンの精神分析』の感想は、http://mihofuyama.blog.so-net.ne.jp/2014-12-14、と、http://mihofuyama.blog.so-net.ne.jp/2014-11-07、に少しだけ。感想で、議論ではないけれど)


10/15 追記
石田浩之の『負のラカン』の第三章には「ふり、嘘、ふりのふり」という節があって、その部分は少し本筋から離れてしかも長いけれど面白かった。
「まね」(本物とは違うという了解がある)と「ふり」(そのものだとだます)は違うという話から始まって、動物はある能記が一つ以上の意味(所記)を持たないので「ふり」や「ふりのふり」は理解できないという。
他者が導かれる議論も面白い。
以下引用(ただし、この本で言う「記号」は能記と所記が一対一のコードで成り立っているものを指し、「言語」と区別されている)


pp.63-63
「「ふり」でも、「嘘」でも、あるいは次に述べようと思う「ふりのふり」でも、嘘、ふりをしかける者と、それにだまされる者との間では、コードの水準が異なっていなくてはならない。つまり、送り手のコードと受け手1のコードのように、別々の解読が成立していなければならないのである。そうでないと(中略)「ふり」、「嘘」という現象そのものが存在しないことになってしまう。逆にいうと、嘘、ふりという現象が存在する以上、世界のなかには自己(しかける者)のコードとは異なったコードをもつ他者(だまされる者)が「存在している」ことになる。これは、人間の場合の「ふり」、つまり「嘘」が言語現象、意味現象であることを意味し、ラカンのいうように、言語は言語である以上、ひとりきりでは成立しない(つまり、間主体的(intersubjectif)なものでしかありえない。あるいは他者(のコード)という場所を必ず必要とする)ことをよく分からせてくれる例である。もっとも、言語についてでさえ、自分の頭のなかで考え、発信する自分とそれを解読する自分との間のコードが一致する例ばかり考えていては、このような帰結は見逃されてしまうのであるが。」

pp.73-74
「さらに、単なるふりの場合、考えようによっては、動物でも可能であるように思われるのに対して、ふりのふりの場合は、ひとつの「ふり(嘘)」を見抜いている者を前提としているために、つまり記号のレヴェル、記号の解読者ではなく、能記のレヴェル、能記の解読者(他者)を前提としているために、動物にはまったく「ふりのふり」の可能性はないのである」


負のラカン―精神分析と能記の存在論

負のラカン―精神分析と能記の存在論

  • 作者: 石田 浩之
  • 出版社/メーカー: 誠信書房
  • 発売日: 1992/04
  • メディア: 単行本




ラカンの精神分析 (講談社現代新書)

ラカンの精神分析 (講談社現代新書)

  • 作者: 新宮 一成
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1995/11/16
  • メディア: 新書




二人であることの病い パラノイアと言語 (講談社学術文庫)

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  • 作者: ジャック・ラカン
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/12/13
  • メディア: 文庫



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