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十一日目 ヘルマン・ヘッセ『デミアン』 [読書記録・日記]

十一日目はヘルマン・ヘッセ『デミアン』。

----(引用)----
(前略)それがどんなものか、ほんとうに生きている人間とは何か、ということは、たしかに今日では、前よりもわからなくなっているし、さればこそ、ひとりひとりが、自然というものの貴重な、一回かぎりの実験である人間が、大量に銃殺されつつある。もしもわれわれが、一回かぎりの人間以上に出ないとすれば、われわれのひとりひとりが、銃弾でもって、あとかたもなくこの世から消されうるとすれば、物語なぞ述べることは、なんの意味もなくなってしまうであろう。ところがどんな人間でも、ただかれ自身であるばかりでなく、なおまた、一回かぎりの、まったく特別な、あらゆる場合に重要な、注目すべき一点をなしていて、その一点で世界のいろんな現象が、あとにも先にもただ一回かぎりのすがたで、出会うわけなのである。だから、どんな人間の物語も、重要で、不朽で、神々しい。だから、どんな人間でも、どうにか生きながら、自然の意思をみたしているかぎりは、すばらしいものだし、注意にあたいするものなのだ。どの人間の中でもひとつの精神が形となったわけだし、どの人間の中でも、生きものが悩んでいるし、ひとりひとりの救世主が十字架にかけられるのである。
 人間とは何かということを、こんにち知っている人はすくない。それを感じている人は多い。だからわりあい楽な気持ちで、死んでゆくーちょうどぼくが、この物語を書きあげてしまったら、おそらくわりあい楽に死んでゆくのと同様に。
----(岩波文庫、pp.8-9、はしがき)

『デミアン』は私はぜひ紙で読みたい。このはしがきの部分を読み始めたとき、この文章はゆっくり読もうと思った。

amazonで新潮文庫と光文社はkindle版があって、このはしがきの部分はサンプルで読むことができる。新潮文庫は岩波とにているけれど、光文社はかなり違う。私は岩波文庫のこの文章がとても好きで、他の訳だったらこの文章をこれほど好きになったかわからない。ただ岩波文庫はkindleがなくて試し読みできない。はしがき全文はとても良いので、よければkindle版サンプルで新潮文庫を読んでみて欲しい。光文社はだいぶ趣が違うのも面白いかも。

そういえば、五日目のポー「大鴉」の時に書いた阿部保の『ポー詩集』、どうしても見たことがある気がすると思っていたら、やっぱり家にありました(下のリンクのものより古い表紙のもの)。古本で買ったみたいで、中に誰かに宛てたメモが入っていた。そこでアイザック・ワッツ『ホーライ・リリカイ』と西脇順三郎がすすめられていた。私はどっちも読んだことがないけれど、読んでみようかな。アイザック・ワッツは賛美歌作家みたい。
そういえば、前に『数学的経験』という本を古本で買ったことがあり、内容はそのときは全然わからなかったのだけれど、押し花が入っていた。いまぱらぱらめくったら、内容も面白そう。どうしてあのときは読まなかったのだろう。押し花はせっかくなので入れっぱなしになっています。


デミアン (岩波文庫 赤435-5)

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  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2020/04/25
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デミアン (新潮文庫)

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  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/04/25
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デーミアン (古典新訳文庫)

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ポー詩集 (新潮文庫)

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  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/04/25
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