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十日目 橋本治『百人一首がよくわかる』 [読書記録・日記]

十日目は橋本治『百人一首がよくわかる』。
今日は本当はヘッセの『デミアン』にしたくて、それを受けて明日以降何にするかも決めていたんだけれど、岩波の『デミアン』を閉鎖中の大学に置いていた。うーん、別件の時に一緒に持ち出すか。他にも持ち出したい本があるし。さすがに全て買い直していたらそれなりの額になる。
というわけで今日はちょっとやさぐれ気味。

----(引用)----
西行法師
嘆けとて 月やはものを 思はずる
 かこち顔なる わが涙かな

現代語訳
「泣けとでも言うのか月は」と思っちゃう
 文句の多い 俺の涙さ

(中略)
「かこち顔なるわが涙かな」の一節を覚えたら、この文句だけで一生我慢できます。
----(pp.192-193)----

この本は橋本治が百人一首に身も蓋もない現代語訳をつけながら解説するもの。西行法師の歌に対して、わがままが多い俺、みたいな訳をつけて、そして使いたくなる解説がついてるので、特にすごく感動するのではないけれど、使ってみたくなる。今日みたいなときにね。一生は我慢できないけど。

----(引用)----
中納言朝忠
逢ふことの たえてしなくは なかなかに
 人をも身をも 恨みざらまし

現代語訳
セックスが この世になければ 絶対に
 こんなにイライラ しないだろうさ!

(中略)
この歌をおとなしく解釈します。「あなたが好きだ。でも会えない。それがつらくて自分にもイライラするし、あなたにも八つ当たりしてしまう」です。でもこの歌はもっと過激になります。「セックスというものがなかったら、他人にも当たらないし、自分にもイライラしない」です。
(中略)この歌の作者は、きっと有名なこの若も知っていましたー在原業平作の「世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」です。「桜の花がなかったら、世間の人は静かだろう」というのですから、この歌だってー。
----(pp.108-109)----

この前の歌は「逢ひ見ての 後の心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり」です。このあたりはまあこういう感じで笑ってしまう。橋本治がどの歌も楽しそうに解説するので、楽しくなります。
橋本治は中学のときに『宗教なんかこわくない!』を読み、なんてわかりにくく書くけれどわかりやすい人だろう、理解するためにジェットコースターに乗っているみたいだ、と思いました。私が読んだ多くの彼の本がそういうスタイルで書かれていたけれど、この本はみじかく読みやすく書かれています。きっと、和歌を読んでほしかったんだろうな。


百人一首がよくわかる

百人一首がよくわかる

  • 作者: 橋本 治
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/04/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




宗教なんかこわくない! (ちくま文庫)

宗教なんかこわくない! (ちくま文庫)

  • 作者: 橋本 治
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2020/04/24
  • メディア: 文庫




デミアン (岩波文庫 赤435-5)

デミアン (岩波文庫 赤435-5)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2020/04/24
  • メディア: 文庫



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