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十四日目 フィッツジェラルド『若者はみな悲しい』

『華麗なるギャツビー』にしようとしたら見つからなかったので、十四日目はフィッツジェラルド『若者はみな悲しい』。

----(引用)----
 ある個人を語ろうとすると、それだけで人間のタイプを語ってしまう。もしタイプから始めると、話はどこにも行かなくなる。誰だっておかしな生き物だ。
----(p.10、「お坊ちゃん」)----

『移動祝祭日』からのつながりでフィッツジェラルドにしようとしたけれどギャツビーが見つからなかった。うーん、この本はもしかしたら売ったかも?ということで代打で『若者はみな悲しい』。これは自選短編集。全然覚えていなくて、二つの話を読み返してしまった。ここが好き、という切り取りが難しいのだけれど、どんどん読ませる。

----(引用)----
「ポーラ......ポーラ!」
 こんな言葉が、まるで手につかんだように、ポーラの心を絞った。腕の中で小刻みにふるえるのがわかるだけに、アンソンは気持ちが伝われば十分だと思っていた。これ以上言うことはない。言えば結婚に踏み込む。そんな謎めいた現実に運命を託したくない。こうして抱いていられるなら、あわてることはない。一年でも、ずっと先でも、このままでよいではないか。どちらかというとポーラへの配慮のつもりだった。
----(p.34、「お坊ちゃん」)----

最初の話「お坊ちゃん」は、大金持ちで家柄もよく押し出しも強く、他にない魅力や欠点をもつアンソンの主に恋愛や結婚を主軸に描いた話。アンソンはなかなかうまくいかず、しかしうまくいかないということを認められない。もう一つ読み返した「子どもパーティ」も、階級や男女の別を(いまなら問題になりそうだが)描きながら、なんとも言えない心の動きを、一見平凡な筋立てなのに生き生きを書く。


若者はみな悲しい (光文社古典新訳文庫)

若者はみな悲しい (光文社古典新訳文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/12/20
  • メディア: Kindle版


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