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十五日目 『謡曲集』から「紅葉狩」 [読書記録・日記]

十五日目はお能の謡曲から「紅葉狩」。

----(引用)-----
堪へず紅葉 青苔の地 
またこれ涼風 暮れ行く空に 
雨うち注ぐ 夜嵐の
物凄まじき 山蔭に
月待つ程のうたた寝に 片敷く袖も露深し
夢ばし覚まし給ふなよ 夢ばし覚まし給ふなよ
----(『新潮日本古典集成 謡曲集 下』「紅葉狩」、p.308、改行は私)----

最初私はこのフレーズから「紅葉狩」が好きになったのですが、前半は白楽天の歌が元なので、半分は白楽天が好きなのかも。
筋としては、平の維茂が山に鹿狩りに行くと、やんごとない感じの女性たちが紅葉狩をしている。失礼にならないようにと馬を降りて通り過ぎようとすると「あら情けなきおんことや 一村雨の雨宿り 一樹の蔭に 立ち寄りて...」(ちょっと飲んで行きなさいよ)とか言われてだいぶ飲んで寝入ってしまい、そしたら女性は実は鬼で、そのことを夢で八幡宮の神様に教えてもらい、打ち取る、という話です。
この鬼の女性が好き。もともと維茂が来る前から良い場所を探して紅葉狩をしているようなので、最初は単に紅葉狩したくて出てきたのかしら。
謡曲は和歌や漢詩が色々仕込まれているので、なかなか教養が足りなくて一人で十分味わえないのだけれど、書籍の注を読みながら掛詞や枕詞も気づきつつ、音読すると楽しいです。

----(引用)----
さなきだに人心 乱るる節は竹の葉の
露ばかりだに受けじとは 思ひしかども盃に
迎へば変はる心かな
----(同書、p.307)----

「さなきだに」は「然なきだに」で「そうでなくてさえ」という意味のようです。
お酒をすすめられた維茂の状態です。だいたい現代と同じ。つい飲んだときに「露ばかりだに受けじとは 思ひしかども盃に」とか言ってみようか。


謡曲集〈下〉 (新潮日本古典集成)

謡曲集〈下〉 (新潮日本古典集成)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1988/10/01
  • メディア: 単行本



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