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二十四日目 村上春樹『ねむり』 [読書記録・日記]

二十四日目は村上春樹『ねむり』。今日はだいぶ眠いのだけどこんな眠い日に『ねむり』で大丈夫かな。

----(引用)----
私は本を置いて明かりを消し、台所でコーヒーを温めて飲んだ。頭の中に残っている小説の場面と、突然やってきた激しい空腹感のせいで、まともなことは何ひとつ考えられなかった。私の意識と肉体はどこかでずれたまま、固定してしまったようだった。私はパンを切り、バターとマスタードを塗り、チーズとレタスのサンドイッチを作った。そして流し台の前に立ったまま、それを食べた。そんなに激しくおなかが空くのは私としては珍しいことだった。息苦しいばかりに暴力的な空腹感だった。サンドイッチを食べ終えてもまだおなかが空いていたので、もうひとつ同じものを作って食べた。そして二杯目のコーヒーを飲んだ。
----(p.42、新潮社)----

『ねむり』は『TVピープル』に収録された『眠り』を改稿して出版されたもの。『ねむり』には絵がついている。私はどちらかというと、『TVピープル』の中の『眠り』の方が好きなのだけれど、ちょっとその本が深いところに仕舞われているので、今日は『ねむり』の方。
この小説は、金縛りにあったことを契機に主人公(主婦)が眠れなくなり、しかし全く体調に異変なく、むしろ若々しく集中力がまし、ひたすらブランデーとチョコとサンドイッチを食べながら読書するという話。サンドイッチやチョコレートがとても美味しそう。しかし金縛りのシーンは結構怖くて、引用できなかった。というか、村上春樹のこの『ねむり』の文章は、なんだか不吉な感じがしてあんまり写したくないな。そういう種類の文章があるのか。あるいは、私が眠いからか。
チョコレートのシーンにしておこう。

----(引用)----
 その白く変色した大昔のチョコレートのかけらを見ているうちに、無性にチョコレートが食べたくなった。私は昔と同じようにチョコレートを食べながら「アンナ・カレーニナ」を読みたかった。体じゅうの細胞という細胞がチョコレートを求めて息をひそめ、ぎゅっと強く収縮しているみたいに感じられた。
----(p.45)----


ねむり

ねむり

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/11/30
  • メディア: ハードカバー




TVピープル (文春文庫)

TVピープル (文春文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1993/05/10
  • メディア: 文庫



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