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三十五日目 小川洋子『海』 [読書記録・日記]

三十五日目は小川洋子『海』

----(引用)----
「全部のハネが、まとまりなく勝手気ままな方を向いているところ。粘膜が脱落して、もともとの滑らかさが失われてしまった様子を、よく伝えているように思います」
 視線がこちらに寄ってくる気配がしましたが、気のせいかもしれません。
「だからこそ、よく欠けるのです」
 活字管理人の声は一度すりガラスに吸い寄せられ、そのあとゆっくり、小窓を濡れて伝わってきます。
「それに比べて、爛の字は端正です。取り澄ましたところがあります。ですからなかなか欠けません」
----(p.69、「バタフライ和文タイプ事務所」、新潮文庫)----

さて、欠けた活字はなんでしょう?

小川洋子は短編と長編で筋の感じが違う。長編は結構似ている気がするのだけれど。

この文章紹介シリーズには問題があって、どうしても、引用しようとして書籍を開くとその本が読みたくなってしまう。そうすると、次の日に他の本を紹介したいという気持ちがだんだん少なくなってくる。もっとじっくり一つの本を読みたいな、という感じ。私は、wikipediaとかネタバレサイトで読んだ気持ちになるの、どうでもいい本じゃないと無理だと思うな。
一方で、人の記憶容量には限りがあるから、きっと何かで要約しながら読んでいる(そういう研究をしているので)。でも、だから、できあがった要約の内容ではなく、要約していく過程が、読書の体験なんだろう。現実と同じで。
そういうわけで、そろそろ一冊読みながら、毎日その本の中から文章を紹介する形に変えようか検討しよう。


海 (新潮文庫)

海 (新潮文庫)

  • 作者: 洋子, 小川
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/03/02
  • メディア: 文庫



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