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二十八日目 夢野久作『ドグラ・マグラ』 [読書記録・日記]

二十八日目は夢野久作『ドグラ・マグラ』。

----(引用)----
 巻頭歌

胎児よ

胎児よ

何故踊る

母親の心がわかって

おそろしいのか
----(Kindle版および青空文庫、巻頭歌)----

『ドグラ・マグラ』の書籍がどこにも見当たらない。『百頭女』といい、絶対売らないはずの本がごっそりどっかに行ってる。うーん、どこに行ったんだろう。だいたいあるはずの場所は全部探したんだけれど。青空文庫でただで読めるし、対応してKindle版で無料で読めるので、興味のある人はぜひ。でも私は紙で読みたい。
Kindle 版で見ると、なぜか巻頭歌の最後の一文「おそろしいのか」が切れてしまう。文字サイズを小にすると見えるけれど。この一文がなかったら全然意味が変わってしまう。この歌は、一度読むとなかなか忘れられない。一方で、『ドグラ・マグラ』全体の話の筋はあまり覚えていない。
そして有名な冒頭。

----(引用)-----
 …………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。
 私がウスウスと眼を覚ました時、こうした蜜蜂の唸るような音は、まだ、その弾力の深い余韻を、私の耳の穴の中にハッキリと引き残していた。
 それをジッと聞いているうちに、……今は真夜中だな……と直覚した。そうしてどこか近くでボンボン時計が鳴っているんだな……と思い思い、又もウトウトしているうちに、その蜜蜂のうなりのような余韻は、いつとなく次々に消え薄れて行って、そこいら中がヒッソリと静まり返ってしまった。
 私はフッと眼を開いた。
 かなり高い、白いペンキ塗の天井裏から、薄白い塵埃に覆われた裸の電球がタッタ一つブラ下がっている。その赤黄色くひかる硝子球の横腹に、大きな蝿が一匹止まっていて、死んだように凝然としている。その真下の固い、冷たい人造石の床の上に、私は大の字型に長くなって寝ているようである。
 ……おかしいな…………。
----(同上、冒頭)

ブウウ――――――ンンンが有名な冒頭。このあとも、記憶喪失になった主人公に、妹で殺された許嫁からの

----(引用)----
「……お兄さまお兄さまお兄さまお兄さまお兄さま……お隣りのお部屋に居らっしゃるお兄様……あたしです。妾あたしです。お兄様の許嫁いいなずけだった……貴方あなたの未来の妻でした妾……あたしです。あたしです。どうぞ……どうぞ今のお声をモウ一度聞かして……聞かして頂戴……聞かして……聞かしてエ――ッ……お兄様お兄様お兄様お兄様……おにいさまア――ッ……」
---(同上)----

という絶叫が続くので、とても読みたくなるけれど、本がどこにも見当たらない...。構想・執筆に10年以上かかって、1935年に刊行されたという。ここだけ読むとちょっとラノベみたいだけれど、1935年。以前読み返すと、何度でも発見があった。たしか、時々新聞記事調になったり視点が変わったり、なんだかフラクタルのように入れ子で、おどろおどろしいながら、綺麗な構造を見せられるような読後感だった気がする。でももう10年くらい読んでいない。amazonで見たら、私が持っていた文庫の表紙とは違うものになっている。
本当にあの本はどこに行ってしまったのだろうか。


ドグラ・マグラ

ドグラ・マグラ

  • 作者: 夢野 久作
  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2012/10/02
  • メディア: Kindle版




ドグラ・マグラ(上) (角川文庫)

ドグラ・マグラ(上) (角川文庫)

  • 作者: 夢野 久作
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1976/10/13
  • メディア: 文庫




百頭女 (河出文庫)

百頭女 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1996/03/04
  • メディア: 文庫



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